JICA海外協力隊の世界日記

ブータン便り

現在形から過去形に

Kuzuzanpola! 隊員の岩井です。

執筆日1月27日時点では首都のティンプーに上がって帰国の準備をしています。表敬訪問、荷物の整理、お土産の購入、国際郵便の発送、お世話になった方々への挨拶、なんだかんだで忙しい日々を過ごしています。

そんな感じでティンプーを慌ただしく歩いていたある日、パロで私にゾンカ語を教えてくれた方にばったりと会いました。移民局に行ってきたとのことだったので、もしかしたら海外に行ってしまうのかもしれません。家族の方も一緒にいたので簡単に私の自己紹介をすることになりました。

自己紹介はだいたい決まったことを言います。名前、住んでいる場所、活動内容が主です。いつもの調子で私は以下のように言いました。
Nga Paro lu dedo.
上記はゾンカ語で「私はパロに住んでいます」という意味です。しかし自己紹介を終えた直後、私はふと違和感を抱きました。
あ、”dedo”は現在形だから、”deyi”のように過去形にしなくちゃ。
そこでようやく私は任地パロを去ってしまったことを実感しました。


つい数日前まで住んでいたパロも既に過去の出来事になってしまっており、もう戻ることはできません。その虚しさと喪失感が一気に押し寄せました。今はこうしてこの記事をブータンにて書いていますが、ブータンに住んでいることも3日後には過去形になります。そうした事実に文法の変化を通して気づきました。

加えてこの2年間はパロに住んでいたことが私の一つのアイデンティティだったのかもしれません。パロはブータン人にとっても歴史と情景の観点からおすすめの場所として名前が挙がります。なのでそこに住んでいるというのは私にとっても誇らしいことでした。

しかしティンプーに移動し、現在進行形でパロに住んでいるというアイデンティティは無くなりました。だからといって住んでいた事実が失われるわけではありません。今後の人生においてもパロに住んでいたということは私の記憶の中に存在し続けますし、パロでお世話になった方々の記憶の片隅に私が存在していたら嬉しい限りです。


今回の記事は以上です。おそらくこれも言語化できないことなんだと思います。
ブータン滞在中の記事は今回が最後となります。読んでくださった皆様に感謝申し上げます。帰国後も半年間は世界日記に投稿できるとのことなので、執筆が間に合わなかった内容や、日本に帰国してからの変化や気づき等を書けたらなと思っています。

ブータンは非常に良いところです。日本からの直行便は無く、高い観光税というハードルはありますが、ぜひ人生で一度訪れていただけたら幸いです。

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