JICA海外協力隊の世界日記

バヌアツ便り

バヌアツ便り~防災教育②(学校編-都市/地方/離島)~

2023年度3次隊(2024年2月から)防災・災害対策でバヌアツに派遣されている干場 圭(ほしば けい)です。配属先は、教育訓練省(日本でいう文部科学省に相当)の防災部門で、現地職員と協力しながら学校防災教育の推進や災害リスク削減に取り組んでいます。


前回は、JICA海外協力隊応援基金の支援により入手した訓練用消火器と、その活用方法についてご紹介しました。

バヌアツ便り~防災教育①(配属先編)~ | バヌアツ便り(バヌアツ支所) | JICA海外協力隊の世界日記

今回は、実際に学校を巡回して訓練用消火器を活用した際の子どもたちの反応や、地域ごとに見られた防災上の課題についてお伝えします。


私が配属する教育訓練省防災部門では、事業の一環として学校を定期的に巡回し、子どもたちに正しい防災知識を身につけてもらうための啓発活動を行っています。


今年も昨年に引き続き、サイクロンシーズン(バヌアツでは11月~4月)を前に、教育訓練省および州教育事務所の職員とともに、災害への備えを目的とした防災教育を複数の学校で実施しました。 この取り組みでは、防災教育のみではなく各教員や学校長の災害に対する認識や各学校がどのような備えを行っているかを調査し、今後の防災計画づくりに役立てています。 今回の活動では、首都ポートビラにある学校だけではなく、シェファ州の離島にある小規模な学校も対象とし、合計60校の学校を巡回し、活動を進めました。
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日本では小学校5~6年生を中心に、理科・社会科・道徳などの授業を通して自然災害や自身を守る安全に関する基礎を学びます。 これに合わせ、バヌアツの生徒にもYear6,Year7(小学校6年生,中学校1年生)を対象にJICA海外協力隊応援基金で寄贈された訓練用消火器を用いた消火訓練を実施し、合計44校、生徒・教職員を含めて1121名の参加者に消火器を使用してもらいました。 消火器の存在自体は多くの生徒に知られており、「どこで見たことがある?」と尋ねると、バス・病院・空港などの答えが返ってきました。しかし、日本のように定期的な防災訓練が実施される環境ではなく、また訓練専用の機材が整っていないバヌアツでは、実際に消火器を操作した経験のある生徒はほとんどいません。

そのため、訓練用消火器を手にした子どもたちは、最初こそ戸惑いが見られ、恐る恐る触れている様子が印象的でした。 しかし、実際に操作してみるとすぐに慣れ、「もう一回やりたい!」と列に戻っていく生徒も多く、体験を通して得られる学びの大きさを改めて実感しました。

教員からは、「実物を使った訓練は初めてで、生徒たちの反応がとても良かった」「危険を理解し、正しい使い方を学ぶことが大切だと気づいた」という声も聞かれ、学校としての防災意識向上にもつながる手応えを感じました。

このように、実物を使った体験は、単に操作方法を学ぶだけでなく、自分たちの行動が身の回りの安全につながると実感できる大きなきっかけになってくれたらいいなと感じます。

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さらに学校巡回を進める中で、離島ならではの防災上の課題 も浮き彫りになりました。 特に印象的だったのは、首都ポートビラと離島地域の間に存在する”防災環境の格差”です。
離島の学校や集落では、壊れたまま放置されているウォータータンク(屋根からの雨水を蓄える)が見られるほか、物資・食料が週に数回、小さなボートで最低限だけ届けられるという状況も少なくありません。災害時にはこうした生活基盤の脆弱性がより深刻な問題として表れます。

また、災害発生時に必要な情報の伝達手段が限られていることも大きな課題です。気象警報や避難情報が迅速に届かず、学校長や教員からは「最新情報の入手が遅れる」という声が多く聞かれました。 中央政府や国際機関からの支援の関心がどうしても首都に集中しやすく、離島の地域では 「災害への関心が薄くなりやすい」 「日常的な備えが後回しになりがち」という現状も感じられました。

しかし、そのような厳しい環境の中でも、子どもたちは非常に意欲的に学び、地域の方々も限られた資源を最大限に活用しながら、安全を守ろうと努力している姿が強く印象に残りました。 今回の巡回は、離島地域のニーズをより正確に把握し、今後の支援の方向性を考える上でも意義のある活動となったと思います。

最後に、今回JICA海外応援基金を活用させていただいたことで、活動を通じて配属先の職員をはじめ、現地の皆さまから温かい感謝の言葉を数多くいただきました。 支援をいただいた寄付者の皆さまのおかげで、現場で必要とされる防災教育を実現することができました。心より感謝申し上げます。


私は、2026年2月を最後に任期を終える予定ですが、これまで共に防災教育に取り組んできた同僚や関係者の皆さんが、今後も継続的に事業を発展させていってくれることを心から願っています。 また、現地の子どもたちが安全に学べる環境づくりが、長く続いていくことを期待しています。

今回の世界日記を通してJICA海外協力隊基金を知った方、興味を持っていただいた方は、ぜひ一度、以下のホームページをご覧ください。


JICA海外協力隊応援基金 | 事業について - JICA


Ale,tata! (それでは、また!)

干場 圭 (2023年度3次隊/防災・災害対策)

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