JICA海外協力隊の世界日記

インドネシア日記~ソロ活動中~

#23 イスラム教とラマダン

こんにちは!

今回はインドネシア人の約9割が信仰する「イスラム教」とその断食月である「ラマダン」について、私の任地での経験をもとにご紹介します。

まずはイスラム教の概要について説明します。

イスラム教は、7世紀のアラビア半島で預言者ムハンマドが神の啓示を授かり、その神の言葉がムハンマドから人々に伝えられたことで広まり始めました。唯一神である「アッラー」への服従・帰依が、イスラムの教えの根底にあります。ムハンマドによって示された神の言葉は、コーランという書物にまとめられており、イスラム教信仰の礎となっています。イスラム教徒のことをムスリムと呼びます。

インドネシアの人口約2億7,000万人のうち、ムスリムは約2億4,000万人で、人口の約90%を占めています。生活の中に宗教が密接に関わっており、私の配属先での活動においても宗教を意識する場面はたくさんあります。そこで今回は、私が感じた任地での宗教、とりわけイスラム教の影響について、項目にわけて説明していきます。

〇身分証明書について

インドネシアでは身分証明書において、名前や住所、性別のほかに、宗教を明記する必要があります。公的に認められた6つの宗教(イスラム教、キリスト教カトリック、キリスト教プロテスタント、ヒンドゥー教、仏教、儒教)のいずれかの信仰が義務とされています。宗教についての関心が高く、インドネシア人との会話の中で初対面であっても「宗教は何?」と聞かれる頻度は多く、日本で宗教について聞かれた経験がない私はインドネシアに来た当初、困惑しました。「無宗教」という概念が理解されにくいため、私は「仏教」と答えています。

〇福祉現場のプログラムについて

配属先の利用者に基本情報を聞き取る際にも、宗教は必須の聞き取り事項となっています。そして、それぞれの利用者が信仰する宗教に応じたプログラムが提供されています。コーランを勉強する会が男女別で週1回開かれており、ムスリムの利用者は参加が義務付けられています。コーラン勉強会での学習態度は、利用者の能力や勤勉性を評価する指標となっており、福祉現場において宗教の存在感は大きくなっています。

〇礼拝について

ムスリムは1日5回の礼拝が義務付けられています。職場にもモスクと呼ばれる礼拝所があり、勤務時間中であっても、礼拝の時間が来たら、仕事を中断しお祈りをしに行きます。「アザーン」と呼ばれる、礼拝時間を知らせる呼びかけが大音量で聞こえてくると、ムスリムの方たちがこぞってモスクに移動していきます。モスクに行くことができない人たちは、イスラム教の聖地とされているメッカの方角を向いてお祈りしています。しかし金曜日には、男性は必ずモスクでの合同礼拝を行う必要があります。

続いて、「ラマダン」について説明していきます。

ラマダンとは断食月のことで、ムスリムにとってはイスラムの信仰をより深めるための神聖な月と考えられています。ラマダン月の間は毎日、日の出前から日没までの間、飲食、喫煙、性的な営み、喧嘩が禁止されています。

色々な制限がある中で、飲食ができないことは、私にとって一番堪えがたいものであると考えています。インドネシアに来て初めて経験したラマダンでは断食にチャレンジしてみましたが、空腹感よりも喉の渇きに耐えることができず、午前中で断食を断念しました。インドネシアは常夏で30℃を超えていることもあり、断食をするには非常に厳しい環境だなぁと痛感させられました。

ムスリムの同僚によると、断食によって裕福な人も貧しい人も同じ苦しみ(喉の渇きや空腹)を経験することで、恵まれない人々のことを思いやる良い機会になるとのことです。また、家族や知人たちと断食を経験することでより強い連帯感を感じられるといいます。ラマダンは、ムスリムとしての徳を積む修行と位置づけられており、苦行といった考えではなく、前向きに断食月をとらえていることに驚かされました。

ムスリムの人の前で飲食をすることが憚られるため、私はこっそりと隠れて、水分や食事を摂っています。時々、水を飲んでいるところを見られてしまい、「ケン!断食していないの!」とからかわれることもあります。

その他にも、ラマダン中の私の任地について項目にわけて簡単に説明していきます。

〇勤務時間について

通常は7時30分から16時までの勤務時間が、ラマダン(断食月)の期間中は8時から15時までと1時間30分短縮されます。ラマダン期間中、ムスリムは日中は飲食が基本的にできません。断食をしていることで仕事のパフォーマンスにも少なからず影響があることから、ムスリムの方たちに配慮した勤務時間となっています。

〇プログラムの中止について

私の配属先では、以前紹介したように金曜日に体操がありますhttps://world-diary.jica.go.jp/fushimikentaro/activity/5.php)が、ラマダン期間中には中止となります。日中の水分補給ができないため、身体を動かすアクティビティは控えられています。

〇食堂の臨時休業

職場内の食堂は、ラマダン期間中は休業してしまいます。私を含めたムスリム以外の職員は朝食、昼食難民となってしまいます。開いている店を探したり、事前に家で食事を準備したりする必要があります。利用していた食堂が1ヶ月休業していることで、いつも美味しいごはんを食べられていたことに感謝の気持ちが溢れてきます。不便を感じることでより感謝の気持ちが芽生えてくるようです。

以上が私の任地で感じる「イスラム教」と「ラマダン」についての話でした。私にとって2回目のラマダン期間が4月上旬に終わりを迎えました。普段とは違う特別な月をムスリムの人たちと一緒に過ごすことができたことは私にとって貴重な経験となりました。

それではsampai jumpa lagi!(読み方は ”サンパイ ジュンパラギ”  意味は またお会いしましょう" )

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ