2025/11/10 Mon
公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト 環境教育
Kandyで最も貧困な地域に射す光~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part5

スリランカ第2の都市・Kandy市の中でも最も貧困層が暮らす地区、
「Mahaiyawa(マハイヤーワ)」の衛生環境を向上させるために、1つの活動が始まった。
この地区がどんな場所で、どんな人々が暮らしているのか——
気になる方は、ぜひこれまでの記事をご覧いただきたい。
↓
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part1
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part2
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part3
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part4

・なぜ、トイレを綺麗にするのか
朝、トイレの前を行き交う子どもたちに、Yutoが1枚の紙を手渡した。
「トイレ入り口前の壁に描くメッセージを考えて、紙に書いてみよう。」
これまで毎日のように「どんな言葉を描きたい?」と声をかけていたこともあり、
子どもたちは真剣な表情でペンを走らせた。
子ども同士で話し合いながら言葉を決めていく。
内容はタミル語で分からなかったが、活発な議論の様子から熱意が伝わってきた。
決まったメッセージは、2つ。
“Don’t waste water.”
“Keep this toilet clean.”

「どうしてトイレを綺麗にすることが大事なの?」と尋ねると、
「トイレが汚いと臭いし、使っていて気持ちよくない。だから綺麗にする。」
と、子どもたちはまっすぐに答えた。
その表情には、“自分たちの場所を良くしたい”という意思が見えた。


・チョークの線に込める思い
メッセージの文字も自分たちでデザインし、チョークで下書きを始めた。
余白や文字バランスを意識して、書いては、消してを何度も繰り返し、、。

他の子どもたちも続々と集まり、
「何かできることは、ある?」と声をかけてきた。
前日の大雨で流れた部分を塗り直したり、
「窓枠も塗ってもっと綺麗にしたい!」と提案したり――。
彼らの中に“自分たちのトイレをよくしたい”という意識を感じた。
・子ども達との「問い」と「気づき」
一方で、この日は土曜日。
訪れる時間がバラバラな子も多く、熱量の差も感じられた。
そこで、皆で円になって集まった。
Yutoが静かに問いかける。
「なぜ、私がここに来たと思う?」
子どもたちは一瞬黙り込み、やがて1人がこう答えた。
「私たちのため?」
Yutoが毎日、朝から晩までMahaiyawaに通い続けて壁画を描いてきた姿は、
言葉以上に子どもたちの心に届いていたのだと思う。

・約束が生まれた瞬間
“メッセージと行動を結びつけないと意味が無い”
その信念の元に、Yutoはさらに問うた。
「トイレの近くにゴミが落ちていたら、君たちはどうする?」
少し考えた後、子どもたちは答えた。
「自分たちで、拾う。」
Yutoは小指を差し出し、
「約束してくれる?」
その言葉に、子ども達は約束をした。
瞬間、笑顔が広がった。

・信じること
この約束がどこまで続くかは、正直に言うと分からない。
けれど、この瞬間に交わした思いは、きっと心に残り続ける。
子どもたちは場を締めた後も、楽しそうに、あるいは黙々と色を塗り続けていた。
その姿を見て、私たちは小さな安心と希望を胸に帰路についた。

・子ども達の笑顔が照らす未来
このプログラム一番の成果は、子ども達の笑顔だった。
Yutoが壁画を描く姿に目を輝かせ、「何を描いているの?」と尋ねる子。
初めての壁画づくりにドキドキしながら筆を動かす子。
自由な発想で色を重ねる子。
どの瞬間の表情にも、この地域を照らす光が宿っていた。
―彼らの眩しい笑顔を失わない限り、Mahaiyawaに光は射すー
そして、これからの地域をつくるのは、間違いなく彼ら自身だ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
文章や写真を通じて少しでも、
スリランカのKandy、Mahaiyawaを身近に感じ、心を寄せていただけたなら幸いです。

・終わりに
このプロジェクトに快く協力してくれた
アーティストのYutoに、心からの感謝を込めて。
※彼はJICAボランティアではありません。
JICAロゴ入りのシャツを着ていますが、私のものを貸し出しています。
最終話と言いながら、トイレのビフォーアフターを載せた番外編の記事を掲載予定です。
そちらも是非、見ていただけると嬉しいです。
මෙතරම් දුරක් කියවීම ගැන ඔබට බොහෝම ස්තූතියි!!
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